徒歩30分

似合わないスーツには少ししわがよっていた。

近所の野良猫はあくびをしていた。

川沿いの桜の蕾は少し膨らんでいた。

このまま電車に乗り続ければ君の街まで行けるのになと思ったけど、結局降りて家に帰った。

今なら、あの時のあなたの気持ちもわかるんじゃないかなと思ったりした。

待っててなんて言われて、待っててもいいことなんて、なかったよ。待っててって言ったけど結局そっちに行けなかったよ。

宛先のない手紙。聴き慣れた音楽。お気に入りの歌詞。誰にも教えられない本。

暗い暗い暗い部屋だった。

置いていかれるのが怖くて、先に進んでるふりばっかりして寄り道してたけど、もうみんなはずっと遠くに先に進んでるから、追いつけない。